Blew 中庭のある家ブログ

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現地調査

Blew01 2010/01/02 現地調査


千葉県市原市にある全10区画を宅地開発した1区画が計画地となります。
建て主さんから土地選びの段階から声を掛けていただいたので、要望を把握した上で土地選びのアドバイスをさせていただきました。
当初は日当たりの良さを重視して、開発区域入口側の国道沿いの敷地を希望されていましたが、騒音やプライバシー等の実際の住み心地を考慮し、一番奥側にある敷地を選択しました。
市街化調整区域にあるのですが、従前より宅地として利用されている地域に含まれるため、住宅の建築が認められています。
敷地条件は建蔽率60%・容積率100%となり、建物高さも2階建てであれば斜線に掛かることは無いので、様々な選択肢が考えられます。
まだ、道路工事のみが完了した状態で、各区画の境界ブロック工事は済んでいないので、開発計画図と境界杭を頼りに敷地と周辺環境を確認しました。



基本設計完了

Blew02 2010/08/12 基本設計完了


西側道路に3台分の駐車スペースを確保した上で、残地に矩形のボリュームを配置したコートハウス型の計画としました。
外壁で囲いこんだ後に大小の中庭を散在させ、光の入り方や視線の抜け方を検討していきました。中庭のある家では中庭と内部との関係が重要な要素となります。
大きい中庭は子供の遊び場やくつろぎの場として、小さい中庭は各部屋の採光通風の経路や植物を観賞する場として機能します。
同時に外部と内部の緩衝領域としての意味を持つので、外部からの視線もコントロールしています。
外部に対して直接窓を設置した場合、視線の制御はブラインドに頼ることが多く、そうなると大部分の時間は窓が塞がれることになります。
緩衝領域を設けることで外との関係が段階的になるので、積極的に窓を開け放つことが可能になり、自然が身近になることで心地良さを体感できることを意図しています。



着工

Blew03 2011/05/09 着工


実施設計図の作成が終わり、確認申請の認可もおりましたので、いよいよ着工となります。
土地選びの段階から携わって1年半、当初は大きな空地があるだけでしたが、今では半数の区画に家が建っています。
建て主さんからは最小限の要望のみを伝えられ、判断の大半を任せていただきました。
それぞれの思いに心を砕いて考えを巡らせることで、これまでとは違った設計過程となったので、責任も重大ですが結果としてどの様に現れてくるか、不安と期待が入り混じります。



配筋検査

Blew04 2011/05/21 配筋検査


基礎配筋が完了しました。基礎伏図を基に鉄筋の径・かぶり厚・定着長さ等を確認しました。
木造2階建なので普段見慣れているものよりは鉄筋密度が薄めです。コンクリートを打設するとやり直しがきかないので慎重になってしまいます。




上棟

Blew05 2011/06/08 上棟


基礎の養生期間もしっかりと確保し、いよいよ上棟です。家づくりでは節目となる日なので、建て主さんにも様子を見学していただきました。
上棟式を執り行う方は少なくなりましたが、現場に来ていただくだけでも職人さん達に家づくりへの思いが伝わるのでやっぱり良いものです。
なんだか雲行きが怪しいので、早目にブルーシートで雨の養生を準備して解散です。



階段工事

Blew06 2011/06/18 階段工事


上棟直後に現場に搬入されていた鉄骨階段ですが、躯体に取付けされました。
鉄骨階段は、工場で大枠まで造って上棟時にクレーンで搬入する方法と、大工工事がある程度進んだ段階で細かいパーツで搬入し組み立てる方法と2通りあります。
今回は前者の方で、早目に階段が取り付くと現場での移動も楽になるので能率はあがるのですが、着工してからすぐの段階で製作図の承認をすることになります。
設計者としては時間のある限り練り続けたいとの思いや現場で見え方を想像してみたりと、先に延ばしたい気持ちもあるのですが、あるところで線は引かなければならないのです。




外壁下地工事

NDA07 2011/06/29 外壁下地工事



外壁の下地となる面材と透湿防水シートを施工中です。
普段は下地に構造用合板を使うことが多いのですが、今回は法令上外壁は防火構造が求められ、さらに仕上げがガルバリウム鋼板の平葺きとなるため、無機質系耐力面材を下地に使用しています。
戸建住宅で一般的な仕上げは、防火基準も幅広く満たすよう商品開発をしているのですが、特殊な仕上げとする場合は法令をクリアするために下地構成などの検討が必要になります。
この後に施工される仕上げを見ていただければ、それにこだわる理由が見えてくると思います。



大工工事

Blew08 2011/07/13 大工工事



外周りの大工工事が一段落ついたので、内部の工事に入りました。
今のところ、石膏ボードが張られていないので、各部屋が見通せとても広く感じます。
建て主さんはこの状態の感覚で、間仕切り壁が出来た後に現場を見ると、なんだか狭く感じてしまうようです。
最終的には明るい色の仕上げ材が施工されると、今度は一転広く感じるようになるのですが、誰もが一度は抱く不安かもしれません。



断熱工事

Blew09 2011/07/27 断熱工事



内部の間仕切壁の間柱が入り、現在断熱材を施工中です。
世の中には幾多の断熱材がありますが、外壁部分は高性能グラスウールの充填工法を採用しています。
ちなみに屋根は夏の日射を考慮し、現状で最高ランクに位置するフェノバボードという商品を、通気層を設けた外断熱工法としています。
自然素材を使いたい方などのこだわりがある方を除けば、コストと大工さんの慣れを考慮して、普及品を選択することが多くなります。
それぞれ断熱材にはメリット・デメリットがありますが、肝心なのは材料と工法に応じた適切な施工なので、そういったところも現場で確認していきます。



外壁板金工事

Blew10 2011/08/19 外壁板金工事


外壁のガルバリウム鋼板の施工が完了しました。横のラインを強調するために幅広の鋼板を選んで、さらに建物上部に向かって徐々に階段状になるよう張っています。
一枚づつ張られた鋼板は微妙な凹凸があり、既製品の均一な表情とはまた違った雰囲気があります。色に関しても、完全な黒ではなく少し灰色がかったチャコールグレーとしています。
ガルバリウム鋼板の特徴として、塗り替えのメンテナンスが少ないことや外壁材の中では特段に軽いので耐震性にも有利なります。
その特性も重要な要素ですが、加えて独特の質感が箱型の建物にも個性がでるので頻繁に使う材料です。



内壁パテ処理

Blew11 2011/08/27 内壁パテ処理


内部の石膏ボード張りとパテ処理が完了。ここからは仕上げ工事が主となるので現場の様子は日々変わっていきます。
仕上げはビニルクロス貼で、表面はフラットで少し肉厚の柔らかい印象があるクロスです。一般的に使われるクロスは細かいデコボコがありますが、それは下地の凹凸をごまかすためのものです。
今回は下地の粗がそのまま表面に現れてくるので、丁寧に下地処理をする必要があります。それでも日差しや照明があたると、どうしてもパテ処理や釘跡がうっすらと見えてきます。
好き嫌いもありますが、ごまかすためのデザインはあまり気が進まないので、少し手間はかかりますが出来るだけ印象の良いものを使うようにしています。



足場解体

Blew12 2011/09/06 足場解体


外壁回りの工事が完了し足場が外されました。これまで足場とシートに包まれていた外観が見えてくると感慨深いものがあります。
道路の反対側から見た姿は、四角い箱をパテイオやバルコニー等の大小の中庭で切り欠いた形状が見てとれます。
外郭はチャコールグレーのガルバリウム鋼板で、切り欠き部分はライトグレーの窯業系サイディングです。
色を変えているのはコンセプトから導いたものですが、中庭に入る光が拡散しやすいように明るい色としています。



塗装工事

Blew13 2011/09/10 塗装工事


塗装工事が進行中。写真にある階段はチャコールグレーに塗っています。踏板が赤錆色に見えますが、これは塗り分けているのではなく錆止め塗装の色がそのままとなっています。
工事の最中にもこの階段を上り下りするので、塗ったとしても最終的には再度塗装をかけることになるので工事の終盤に一度だけで済むように現場監督さんが段取りしています。
何事も無駄が無いというのは気持ち良いものです。



内装工事

Blew14 2011/09/14 内装工事


内部のクロス貼りが終わりました。高さ5m強の窓から入る反射光が、室内にしっとりとした印象を与えます。
コストの制約でビニルクロスとすることもありますが、ビニルでも特性を活かしたデザインがされているものも、数は少ないですがあります。
化学製品でも機能性以外のデザインの可能性はあると思うので、それが表現されているものは積極的に使用しています。



タイル工事

Blew15 2011/09/24 タイル工事


リビングのタイル工事が完了。リビングの床面は床下空間を利用して、ダイニングより階段2段分下げています。
磁器質タイルを床面だけでなく側面にも張ることで、フローリングが張られたダイニングから見るとリビングが掘り込まれたように見えてきます。
それにより落ち着きのある雰囲気となり、さらに他とレベル差があることで床に直接座っても人や家具が迫ってくるような狭苦しい感じもしません。
そして座ることで自然と視線が下がるので、高さを抑えた中庭側の窓から空を見通せるように計画しています。
磁器質タイルは冬場は冷たく感じるので、ヒートポンプ式の床暖房を全面に敷いて対処しています。
比重がある材料は温まりにくく冷めにくいという特徴を持つので、タイマー設定で安価な夜間電力を利用して熱をタイルに溜めておくことで、朝の冷え込みを和らげています。



設備機器設置

Blew16 2011/10/05 設備機器設置


キッチンや洗面器などの設備機器の設置が完了しました。キッチンはオーダーとなり幅270cm・奥行90cmの対面キッチンとなります。
正面にある大きな中庭に自然と視線が向くので、外の空気を感じながら作業することができます。
オーダーキッチンと言ってもローコストを心掛けて一般的な材料を用いながら、仕上げや色に気を配って野暮ったさを消すようにしています。
天板はステンレスのバイブレーション仕上げ、面材はチャコールグレーのメラミン化粧板、設備機器は基本的な機能を持つシンプルなものを選んでいます。
このキッチンの価格は施工費込で550,000円なので、オーダーキッチンでも尻込みせずに一度検討してみることをおすすめしています。



外構工事

Blew17 2011/10/12 外構工事


カースペースの土間コンクリート工事とバルコニーのデッキ工事が完了。2階にある小さな中庭にはセランガンバツという耐久性が高い木材を無塗装で張っています。
天然木は年月の経過と共に退色が進みますが、セランガンバツはシルバーグレー色に褪せていくのでそれがまた良い風合いでこの建物のデザインに馴染んでいくと思います。
工事も最終段階で、クリーニングを終えたら各種検査を行い、いよいよ竣工を迎えます。




引渡し

Blew18 2011/10/26 引渡し

写真家さんによる建物の撮影も終わり、引渡しを迎えました。
ダイニングテーブルのデザインや家具のコーディネートもさせていただいたので、竣工写真に生活の空気感が残せると思います。
土地探しから数えると約2年。苦楽を重ねたこの住宅が建て主さんの愛着が滲む建物になってくれると嬉しいです。
色々なかたちで工事に協力してくださった方々、これまでありがとうございました。そして今後ともよろしくお願いします。



Blew


所在地:千葉県市原市
主要用途:住宅
構造:木造在来工法 [省令準耐火構造]
階数:地上2階
敷地面積:165.30㎡ [50.00坪]
建築面積:73.32㎡ [22.17坪]
延床面積:119.90㎡ [36.27坪]

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敷地条件:市街化調整区域・用途地域指定無し
敷地タイプ:袋小路・西側道路
住宅タイプ:中庭のある家
一人当たり床面積:19.98㎡/人 [6.04坪/人]
工事費坪単価:■■□□□
撮影:上條泰山